蜂須賀バスターミナル

これは架空バスです。たとえ実在する団体名がでてきたとしても、関係ありません。

はちすか - バスターミナル【蜂須賀バスターミナル】[名] 蜂須賀市虎井にある南洋バスのバスターミナル。

空港リムジンバス 蜂須賀覇覧道路経由 婦路空港行き

 生まれてこの方東京生まれの東京育ち、都会しか知らなかった私が蜂須賀勤務を命じられたときは一体どうなることかと思ったけれども、いざ三年暮らしてみればヨドバシも二郎系もないこの街にもなかなかどうして馴染んでしまって、東京に帰るというのにどうにも名残惜しく、昨夜は大力の家から芋焼酎片手に一人夜景を見下ろしていたのであった。思えばそもそも借り上げ社宅の大力という住所からして読めないし、営業所は所長以下全員強烈な九州方言だしと、来る日も来る日も面食らったのすら懐かしい。それが今では虎井のバスターミナルのジャンボバーガーをタピオカパインジュースで流し込み、三角橋の南の魚醤ラーメンに通い、覇蓮華の炉端で毎週酒を飲む蜂須賀市民である。

 飛行機の前に満腹になっておこうとメガセットを頼んだのが失敗だったか、今日が最後のタピオカパインジュースはバスターミナルで飲みきれず、リムジンバスに持って入ってしまった。リムジンバスは虎井のバスターミナルを発車して、覇蓮華の馴染みの景色が車窓を流れていく。三角橋の交差点で隣に並んだ大力行きが、別れを告げるように右折してイオンの陰に隠れていった。右手のジュースを飲み干すと、パインのイガイガが喉の奥に残った。

市宗街道経由 那覇坂行き

国道沿いのラウワンは原付で行けば20分。

だけれど彼と遊ぶ時はいつもバス。

彼も原付を持っているのだけれど。

この辺で原付を持っていない子の方が珍しいのだけれど。

まさか私が原付を持っていないわけないのだけれど。

だって、見せられないわ、3ケタしかない原付ナンバー!

急行 名読インター経由 南端越岬行き

 結局俺の婦路勤務を一番喜んだのは姉ちゃんだった。確かに日本で一番南にある常夏の島だから観光にはいいんだろうが、それにしても年に二回はハイペースだろう。それも蜂須賀から急行バスで30分もかかるこんな辺鄙なところにわざわざ泊まらなくても、蜂須賀でいいじゃないか。蜂須賀ならロフトもラウワンもドンキもある都会なのに。そういうことを言うと、姉ちゃんは「蜂須賀に泊まるなんて面白くないじゃん」というわけだが、何が面白くないのかさっぱりわからない。

 姉ちゃんから「バス逃した」と連絡が入った。残念、次のバスは一時間後だ。まあ、蜂須賀で待つ分にはいくらでも時間の潰しようがあるだろう。最近池屋の別館にスタバができたことを教えてやった。我ながらよくできた弟だ。バスに乗ったら教えてほしい。頃合いを見てインターまで迎えに行くから。

 リムジンバスを降りたら向かいの百貨店でイベントをやっているのが見えたので、冷やかしに行ったら物の見事に名読行きのバスを逃してしまったというわけ。その件に関しては本当に悪かったと思っているけど、わざわざ蜂須賀に来てまでスタバはないよね。バスターミナルで時間ができたらやっぱりジャンボバーガーでしょ。最近のタピオカミルクティーブームの前にあったタピオカブームのもっと前からやっているこの店は、コンセントもWi-Fiもあるし、放送が聞こえるからバスにも乗り遅れないし、どう考えてもここ以外ないよね。ごめんね。

市宗街道・那覇坂・名読経由 南端越岬行き

悲しみの表象は冬の日本海だなんて、誰が決めたのか。

ギラギラ照りつける太陽と、まぶしく輝く青い海と。

陽気な夏の太平洋にあってこそ、悲しみのみが悲しみとして一層際立つ。

だけれども、この島の陽気には押しつけがない。

押しつけがないからこそ、少し心が落ち着くのかもしれない。

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